大帝都の東端、尾具區橋ノ坂町を一望した時にまず目に付くのが、明星石灰株式會社・橋ノ坂工場の櫓式大煙突である。
明星石灰は大帝都近郊において『浦粕貝灰』と双璧を成す貝灰製造の大手だが、ここ橋ノ坂工場は"鬼の石従組"こと石灰従業員組合の勢力が強大で、数年に一度の割合で大型争議(明星争議)を起こしている。争議の度に敷地内に増築されるバラック要塞は会社側の撤去も追いつかず、工場周辺の不良住宅群と同化しつつある。これはあたかも工場設備が貧民窟に飲み込まれているようにも見え、橋ノ坂町独特の異様な景観を作り出している。
近年の明星争議は益々過激化しており、赤色ゲリラの類が関与しているとの噂も絶えない。